むかしむかし、集団就職というものがあったとさ。
1964年に流行った「あゝ上野駅」(作曲新井英一、作詞関口義明、歌手井沢八郎)という歌では、
就職列車に揺られて着いた 遠いあの夜を思い出す 上の駅は俺らのこころの駅だ …お店の仕事はつらいけど 胸にゃでっかい夢がある なんて歌われています。
それから60年も経った今。
私、最近、ベトナムハノイを起点に、都市部をはなれたところに行ってきました。安いものです、LCCだと4万円前後でいけるんですから。
帰りの飛行機です。ほぼ満席。殆どがベトナム人らしき若者。チェックインカウンターの前では、大きなトランクを2つくらいもった若者が大勢並んでいます。よく見ると、そういった10人前後くらいのグループがいくつか。
さらによく見ていると、「やさしい日本語」なんて書いた本を持っている子もいます。
そう、集団就職。
2022年10月末現在外国人雇用届けを見てみました。
・外国人労働者数は 1,822,725 人(前年比 95,504 人増加)
コロナの影響もあるでしょうけれど、すごい勢いです。
・国籍別では、ベトナム 462,384 人(25.4%)、中国 385,848 人(21.2%)、フィリピン 206,050 人(11.3%)の順。
5年ほど前までは中国人が一番多かったのですが、ベトナム人がどんどん増えており、2019年1〜2月には74,752人だった訪日者は、2023年1〜2月には107,300人と、4割以上も増加しています。
内訳ですが、観光客もおよそ3割おられるようですが、技能実習生が5割を占め、ほかにも留学生も多いようで、よく、日本の賃金は低く、言葉の壁や技能実習の悪評のあって、海外就労先に日本を選ぶ人が減っているという話を聞きますが、ことベトナムに関しては、依然として日本人気が高いようです。
理由はいくつかあるようです。
まずは、もともと親日、日本へのあこがれが強いこと。
日本製品への信頼は高く、化粧品、最近陰のうすくなった家電製品なども、大人気、ビールなんかも飲まれています。バイクが「国民の足」となっていますが、使用されているバイクは圧倒的に日本製。なかでもホンダは普通名詞化していてヤマハのホンダとか言うそうです。
サブカルチャー面でも、日本の漫画とアニメが浸透、ドラえもん、ドラゴンボール、ワンピースなどを見て育っていた若者も多いとうかがいます。
もっとも、ITエンジニアはベトナム国内でもニーズが非常に高く、国内で働いた場合でも15~20万円の給料がもらえるので、わざわざ日本に働きに出ようとは思わない人がいるのも事実のようですが。
翻って日本。東北地方から上京してきた若者たちは、都会に職を得て家族を持ち、多くはそのまま、都会人になっていると思います。
Uターンとかいわれますが、これはリアケースをことさらに喧伝しているだけ。
ベトナムから「上京」した若者たち、国も民族も言葉も違うし、第一、入国管理の規制があるでしょうから、話は全く異なりますが、彼ら、将来どうなるのでしょうか。
故郷に仕送りして、一旗揚げて、日本は良かったな、と思いながら母国に帰っていくのでしょうか。
あるいは、能力が認められて、乞われて残留、日本に定住するひともでるのでしょうか。
日本に来て6ヶ月のグエンさん。
― 時々故郷が恋しくなります。お母さんとは頻繁にSNSで顔見て話しています。
工場だけでなく、コンビニや新聞店、いろいろなところにベトナムの仲間がいますので、友達には事欠きません。
でも、時々ふら~っと、成田空港にいくんですね。
そこで、同国人の集団をぼーっと見ていると心が和むんです。
そうだ、一度、両親を呼び寄せよう。東京だよオッカサン。(ちょっと古いかな。この歌)
ベトナムレストランでの日本人親子の会話。
ー 親父、急に呼び出してどうしたんだい。一人暮らしが長くなってつらくなった?
ー 心配しないでいいよ、なんとかやっているよ。
ー 僕の家にどうぞと言いたいところだけど、2DKだしね。
ー それにしても、ベトナム料理っておいしいね。コンビニ弁当や宅配食ばかり食べていたから、生きかえるよ。
ー このあいだベトナム旅行行ったとおもったら、すっかりベトナム料理好きになったみたいだね。
ー 実は、ベトナムかタイに移住しようかと思っている。アジアもなんか物価たかくなったみたいだけどベトナムの物価はまだまだ安い。
ー え、いきなりなんだよ。言葉も通じないし、病気になったらどうする。なんかあって迷惑するのこっちなんだからね。
ー WIFIさえあれば日本のメディアやインターネットのアクセスはできる。翻訳機があるから大体の用事はたせる。なに、どうせ国内にいても、家の中に閉じこもっているだけで、ろくに人とも会話しない。あっちの高原に行けば常春。人件費やすいから、身の回りを世話する人も雇える。日本で高い老人介護をうけるより、あっちのほうが、ずうっと安く面倒見てくれる。
― でも、家族と会えなくなる。
ー どの口が言う。国内にいたって、会いに来てくれたの4年振りだ。
ー で、どこに行こうと思っているの。なにかあってもすぐ帰れるように空港のそばにしてくださいよね。
ー いや、ベトナムのトゥエンクアンを考えている。タイのチェンマイも候補だけど、物価も安いしベトナムかな。
聞いたことない場所だなと思って調べたら、トゥエンクアンもチェンマイも美人の産地で有名。
あのクソ親父、まだまだくたばりそうもない。