今、企業なんかが人を採用するとき、採用ご担当の人は、大変らしいですね。
次のような質問はタブーです。本人の基本的人権を侵害したり、適性や能力とは関係ない部分で合否を判断したりすることは認められないとの考えに立ったもので、職業安定法に定められ罰則規定まであるそうです。
・本籍地や居住環境に関する質問。お住まいの地域の良いところは、なんて質問も不可。
・家族や家庭環境に関する質問。例えば兄弟の学歴や職業などは聞いてはなりません。転校したことありますか、なんてもののだめ。ご両親はお元気ですかなんてのはもってのほか。
・資産に関する質問。証券会社の面接で、投資経験がありますかなんてのもNG。
・思想や信念に関する質問。呼んでいる新聞、好きな番組、愛読書もだめです。
・特定の性別に限定した質問。上司が女性でも良いですかとか、男ばかりの職場ですが大丈夫ですか、なんてのも聞いてはいけない。
・宗教に関する質問。これはもちろんのこと。たとえ十字架をこれ見よがしに首から下げていても話題にしてはいけない。
・支持政党に関する質問。選挙に行ったかどうかも聞いてはだめ。
・人生観に関する質問。例えば尊敬する人は、モットーはなんて質問も不可です。
多少の例外はあるようで、例えば一部の公務員の採用、運転手募集のとき、違反歴を聞くなど、やむを得ない場合はみとめられるとのことですが、相手の気持ちを和らげ、本音を引き出すなんてつもりで、世間話をすると、すぐハラスメントだとか差別だとか言われてネットで拡散されたりしますので、面接者もうっかりしたことを聞けません。こうなると面接されるほうより、するほうがビクビクものですね。
私なんかが就職した頃は企業のやりたい放題でした。就職試験をうけるためには、戸籍謄本や、家族構成などを届けるのは当たり前、資料を出させるだけでなく企業側も興信所などやとって、受験者の家族関係、交友関係なんか調べ上げたりしていました。
今から考えると酷いものですが、そうやって企業一家にはいりこめば、お互い信頼しあえるということで、今のように性悪説に立ったマニュアル、うるさい職務規定などがなくても事足りていました。もちろん、それによって、本人ではどうしようもない生まれや育ちで差別され、不幸な人は不幸のスパイラルに陥りがち、格差の拡大を招いたのは事実ですが。
NHKの解説から抜粋引用すると、
国家の機密情報や、先端技術の流出を防ぐため、重要な情報を扱う政府の職員や民間人に、機密とされる情報に接する資格を与えるものです。
政府の職員だけでなく、兵器の製造などに使われる軍事転用が可能となる技術を扱うなど民間の担当者も対象となります。AIや、宇宙、サイバーなど、軍事転用が可能な技術の範囲が広がるなかで、こうした流出すれば安全保障上の脅威となるおそれが高まっています。
資格を与えるにあたっては、政府が、その個人や身辺の調査、またその人が属する企業の情報管理体制などを審査して適格性を確認します。資格を与えられた人は、情報を管理する特別なルールによって、厳格な守秘義務が課せられ、漏洩させた場合には厳罰を科すことも検討されています。セキュリティークリアランス制度をめぐっては、民間企業からも整備を求める声があがっています。主要国の多くが整備している中で、日本で同様の制度がないことで、海外とのビジネスの拡大に支障が生じるというのです。
いやー、はじめの話と大違いですね。本人の了解と、聞いた側の厳格な秘密保持義務が大前提とは言え、徹底的な身体検査です。
こんな気の毒な事例もおこるでしょう。
― どうしたの、浮かない顔して。
― 生産管理部に異動になるはずだったんだけど、あきらめようとおもっているんだ。
― どうしたの、あんなに希望していたのに、諦めちゃだめよ。頑張りなさいよ。
― うち、防衛産業関連の金型作っているんでセキュリティクリアランスをくりあしなけりゃならないんだ。いいにくいんだけど、お前の兄さん、アレだろ。
おおかたの企業や組織では無関係なはずですが、これの影響が思わぬ方向におよんでいます。内閣改造のたび不祥事発生に悩まされてきた内閣はじめ、あちらこちら、セキュリティークリアランスと称して、従業員を締め付ける事例が発生してきました。
ある事務所で。
― 決戦の時が近づいてきた。お前らの忠誠心は疑っていないが、念のためセキュリティークリアランスを行う。
― へい、なんのことかよくわかりませんでど、そのセックスランランとかなんとか、よろこんでうけさしてもらいましょ。
― まず、日頃付き合っている人を全部書き出すように。特に女は、ちょっと口利いたでけでもかくんだぞ。それからスマホを少しの間預かる。通信記録をみても文句いわないな。
― へい。
― それから、ここに血判をおしてもらおうじゃないか。
― あ、そうですか、セックスランランて血判状のことだったんですね。親分、合点です。
